スピキュールの降伏応力
処方の中で沈まないための基準と試験法
降伏応力とは、処方が流れ始めるために越えなければならない最小の応力です(単位 Pa・パスカル)。ジェルやクリームの中の網目がスピキュール一本の重さを支えれば、スピキュールはその場にとどまります。スピキュール処方を設計・確認するときの基準と試験法をまとめました。
このページの数値の読み方
数値ごとに表示を付けています。「計算 · 推定」は桁まで信頼できる物理計算値、「計算 · サイズ別再計算待ち」はスピキュールのサイズ別に計算し直す値、「実測 · 試験報告書」は外部機関の試験報告書の値、「文献範囲 · 推定」は一般的な文献値の範囲です。当社のジェル・クリームの降伏応力は未測定で、測定後にこのページへ追記します。
降伏応力は処方の中の網目がつくる
ジェルやクリームの中には網目があります。ジェルは中和したカルボマー粒子が膨潤して互いにかみ合った網目、クリームは脂肪アルコールと乳化剤が水の間に幾重にも重ねた層(ラメラゲル網目)です。
スピキュール一本が自重で押す力がこの網目の支える力(降伏応力)より小さければ、スピキュールはその場にとどまります。
基準は粘度ではなく降伏応力
- 粘度は沈む速さを遅くするだけで、止めることはできません。降伏応力のない 10,000 mPa·s の液でも、長いスピキュールは約 0.1~0.2 mm/h の速さで沈みます(向きによって異なる)。計算 · サイズ別再計算待ち
- 降伏応力があれば、粘度が低くても止まります。
- カルボマーのように粘度を上げる原料は多くの場合降伏応力も同時につくるため、「粘度を上げれば沈まない」が現場で正しく見えていただけです。使うべき基準は降伏応力です。
スピキュールが網目にかける力——置かれた向きが決める
スピキュールの真密度は 2.0417 g/cm³ で水より重いため、網目がなければ沈みます。網目にかかる力はスピキュールの置かれた向きによって変わります。実測 · 試験報告書
向き別の計算はスピキュールの長さ一種類について行ったものです。サイズ別の再計算を進めており、値が出ればこの表をサイズ別に改めます。
- スピキュールは表面積が大きいため、同じ体積の球より沈みにくくなります。特に横たわったスピキュールは網目にかける力がごく小さくなります。
- 中空の針なので、軸管に処方が満ちると実際の重さはさらに軽くなります。上の計算は中が詰まったものとした安全側の値です。
設計基準
降伏応力 1 Pa 以上計算 · サイズ別再計算待ち
最も不利な値(立つ)× 安全率 3
計算に基づく設計目標です。実測によって下げられる場合があります。
計算の根拠:細長い粒子の抗力計算(細長体近似)と、球形粒子で測った文献の停止基準 Y = σy/(Δρ·g·d) ≈ 0.1~0.15。針状では桁までしか信頼しません。確認は沈降試験で行います。計算 · 推定
1 Pa はどのくらいか
1 Pa は 1 m² の面積を約 100 g の重さが押す力です。ごく小さな力です。試験条件 · 換算
たとえ:コピー用紙一枚(80 g/m²)が机の上で押す力 ≈ 0.8 Pa。1 Pa は紙一枚より少し重く押す程度です。
スピキュール一本はとても軽いため、この程度を支える網目があれば止まります。計算では約 0.35 Pa を超えれば止まり、1 Pa は安全率 3 を掛けた安全線です。計算 · サイズ別再計算待ち
製品別の降伏応力
意味:よくできたカルボマージェル・クリームは多くの場合 1 Pa を大きく超えます(推定)。注意すべきなのは、薄いローション・セラムのタイプ、スピキュール投入後の高速撹拌で網目が切れた場合、酸でカルボマーの網目がほどけた場合です。
単位換算:原料メーカーは降伏応力を「yield value, dyn/cm²」で表すことがあります。1 Pa = 10 dyn/cm² なので、基準 1 Pa = 10 dyn/cm² です。試験条件 · 換算
当社のジェル・クリームの実際の値は未測定です。測定したら、この表の横に実測欄を追加します。未測定
剤形別の判定
試験法
- レオメーター応力スイープ
25 ℃ で加える応力を少しずつ上げ、流れ始める点(降伏応力 τy)を読み取ります。結果は Pa。 - ベーンスピンドル降伏試験
ブルックフィールド系の粘度計にベーン(羽根)スピンドルを付けて降伏値を読み取ります。結果は Pa。レオメーターがないときの代わりの方法です。 - 沈降試験(ジェル · クリームは必須 · レオメーター結果と併せて)
透明ボトルに入れて密封し、立てて置きます。室温と 45 ℃ でそれぞれ 24 h · 3 d · 7 d に底の沈降層 mm と上の澄んだ層 mm を記録します。沈降層がなければ合格です。24 h だけで合格とはしません。試験条件 · 換算 - アンプル · 液状
同じボトル試験の後、手で逆さにして振り(振った回数を記録)、再び均一に分散するか、底が固まっていないかを見ます。
製造時に網目を守る方法
- スピキュールは最後に、40 ℃ 以下に冷めてから投入します。投入後は高速撹拌・ホモジナイズを行いません(網目が切れて粘度と降伏応力を失います)。
- カルボマージェルに二価の塩(例:ピロリドンカルボン酸亜鉛)を併用すると網目が崩れることがあります。
- カルボマーは低い pH で網目がほどけます。酸性ジェルには、酸性でも網目を保つポリアクリレートクロスポリマー-6 のような増粘剤を使います。
- ガム系・セルロース系増粘剤(キサンタンガム · セルロースガム · ヒドロキシエチルセルロースなど)はスピキュールのチクチク感を弱めるため、スピキュール処方には使いません。
未測定——測定後に追記するもの
- 当社ジェルの降伏応力の実測値未測定
- 当社クリームの降伏応力の実測値未測定
- スピキュール軸管の直径(計算は中が詰まった側で置く)未測定
最初の沈降観察とレオメーター測定の後にこのページへ追記します。設計基準 1 Pa は計算に基づく目標で、実測によって下げられる場合があります。
参考
- 計算:UNIZ LAB R&D 物理計算(細長い粒子の抗力計算 + 球形粒子で測った文献の停止基準)· 桁まで信頼できる推定
- 真密度:Protech Korea Co., Ltd. ((주)프로테크코리아) · Test report 2022-07-04~05 — AccuPyc II 1340 gas pycnometer · density 2.0417 g/cm³ (5 cycles, σ ±0.0016)